RALLIART

2001年6月5日
株式会社ラリーアート


6月4日キプロス島
 「マールボロ三菱ラリーアート」田口勝彦同乗レポート



Photo
同乗走行中の田口勝彦の三菱ランサー



 WRC第6戦キプロスラリーがゴールした翌日の6月4日、「マールボロ三菱ラリーアート」によるプレス同乗試乗会が行われました。田口勝彦(三菱ランサー)ドライビング同乗レポートをお届けします。

田口勝彦の洗練されたドライビングを堪能
 ラリーの起点となったレメソスの東、約30キロの丘陵地帯で、田口勝彦の運転する三菱ランサーに乗った。田口は最終日のSS20でリタイヤしたが、残りのSSは9キロと7キロ。ほとんどを走り通して、車やWRCの雰囲気に慣れるという当初の目標はほぼ達成した。本戦並みの荒れたダートを田口は「これも練習のうちです」と気合いを込めて走った。

 地中海の東、もうレバノンやトルコがすぐ近くにあるキプロス島は、青い空、青い海。朝から強い太陽が照りつけていた。ビーチにはリゾート客がオイルを塗りたくった背中や腹を太陽に晒し、リゾート気分を満喫していた。
 しかし、こうした風景はリゾート・ホテルのプライベート・ビーチや街並みに続く場所に限られ、1キロも街を離れると、もう人影もない。所々に小さな村があるだけ。ラリー環境は最高と言っていい。ただし、暑さをのぞけばだが…。
 緩やかな麦畑とオリーブの点在する試乗会の丘陵は、小さな山を巡る1周2.2キロほどの周回路があった。農作業などに使う道だが、そこを仕切ってコースができあがった。WRCの行われたSSと似た路面。ちょっと開けた余裕のある所のほかは、松、オリーブが点在する狭い道だ。

 トミー・マキネンが使ったお古のレーシングスーツを借りて着込み、耐火帽、ヘルメットをつけて田口の横へ乗り込む。
 「走りますよ」と田口。ガツンとミッションが入る。路面をタイヤが激しく掻き、ダッシュする。すっと加重が変化した時は、左コーナーをドリフトしながら曲がっていた。軽いジャンプ。肩輪の浮き上がる悪い場所をなめるように走る。180度ヘアピンでは左足ブレーキ、軽くアクセルを踏みながら、右手でサイドブレーキを操作して後輪を流し、するりと方向を変える。ラリー直前のシェークダウンで何となくぎこちなかった田口は、3日間の過酷なラリーで、至難のランサーワークスカーのドライビングをすっかり身につけようとしている。
 ―思いの外スムーズな走りですね。ゆっくりやってるの?
 「いや、十分に注意はしていますが、本番と同じ走りをしています。3日間のラリーでこの車もだいぶわかってきました」
 初体験のワークス参戦。プレッシャーも強かったが、それより「失敗してはいけない」の気持ちと車のセットアップする時間がなかったことなどが、田口にちょっと悔いを残したようだった。
 「ブレーキのバランスが後ろすぎたんです。不安定だったのはそれが原因でした。本番中にいじるのはどうかと思って、終わってから変えてみたのですが、ずいぶん安定して来ました。もっと速くやってみれば良かったんですが、本番でそれが外れたらとんでもないことになりますからできなかったんです」  

 走りは思いの外スムーズでこれまで乗ったグループAラリーカーより反応は遙かにクイックで「4、5、6速のコーナーはイメージ的には、ハンドルを切らなくても自然にリアが流れ向きが変わっていく感じがあります」と言った。
 初日は5回スピン。ハーフスピンも5回ほどあったが、2日目はスピン1回、最終日はスピンしなかった。ベテランのナビゲーター、デルク・リンガー(英国)は「初めスピンするのは問題ない。田口は走ることでどんどん速くなる。ペースノートをキチンと作り、自分の思ったとおりに走れるようになるには走り込むことだ」と言っている。
 経験の浅いドライバーは自分のやっていることがわからなくなるが「そんなときには、真っ直ぐ走れ、と言ってやるんだ。車を左右に振るような走りはリスクが大きい。真っ直ぐ、コーナーを抜けたら真っ直ぐ、それが基本だ。田口はクレバーなドライバーだ。日々、上手に乗るようになっていたのがわかった。あとは経験だね」
 フレディ・ロイックスは笑いながら言った。「僕が初めてこの車に乗ってWRCに出たときは、1レグでコースから飛び出した。田口は上等だよ」と。

ワルデガルドの元コ・ドライバーも田口の素質の高さを認める。
 ベルギーのライターで一緒に田口の車に乗ったミッシエル・リザンさんはビヨン・ワルデガルド(スウェーデン)のナビをつとめたこともあるが、田口をこう評した。
 「ドライバーに必要な条件は二つある。一つはどんな状況でも車を正しい方向に向けるセンス。もう一つは積極的な姿勢だ。今日乗った感じでは、とても上手に走っている。コーナリングも確かだ。あとは速さと経験だろう。技術的には問題ない。経験を積むことが最大の課題だね」
 テクニックは十分となれば、あとは速い車に乗る回数だろう。世界のトップに混じって走った田口は「貴重な経験でした。これを生かすチャンスを作りたい」と言うのがWRC初参戦後の願いだった。



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